【角膜混濁による視力低下に】レーザーによる治療的角膜切除術
2020/04/11
今回はエキシマレーザーによる治療的角膜切除術(Phototherapeutic Keratectomy;以下PTK)についてご案内いたします。
PTKとは、角膜の混濁に対し、エキシマレーザーを照射することで、角膜の表層から実質の一部を切除する手術のことです。主に角膜変性症の治療に用いられます。
角膜混濁とは
本来透明な角膜に様々な原因で濁りが生じる症状です。
先天的なもの、付着物、外傷、目の疾患による炎症などが原因で起こります。
瞳孔領に濁りが生じると、曇りガラス越しのような視界になり、視力の低下を自覚します。
代表的なものとして、顆粒状角膜変性、帯状角膜変性症などがあります。
混濁が進行し視力障害を生じるようになると、PTKの適応となります。
当院では角膜混濁に対してPTK(治療的表層角膜切除術)という治療を行なっています。角膜は削り過ぎると強度を保てなくなるので、濁りをすべて切除できるわけではありませんが、視力に影響している部分をある程度まで切除することができます。
当院使用のレーザーは治療的角膜切除に有用な厚生労働省認可のエキシマレーザーです。
2014年5月より、角膜ジストロフィーや帯状角膜変性に対するPTK手術が保険適用となりました。
(※一部保険適応にならない疾患もあります。)
南青山アイクリニックでは、よりよい医療を提供するため2020年2月よりNIDEK社製の最新型エキシマレーザー角膜手術装置「Quest™ M2」を導入しました。
これまでの同社製エキシマレーザーEC-5000 CXIIIに比べてアイトラッキングシステムが200Hzから1kHzに性能がアップされ、レーザー照射中により高速での眼球追尾が可能となりました。
また、NIDEK社製のエキシマレーザーはスリットスキャニング方式という方法でレーザーを照射します。この照射方法は他社のエキシマレーザーに比べて混濁した組織を均一に切除出来ますので、治療的角膜切除術(PTK)に非常に適したレーザーです。
症例写真
手術前後の角膜の写真をご紹介します。
顆粒状角膜変性症
帯状角膜変性
PTK手術の方法
1 点眼麻酔
ベッドに横になり、点眼麻酔をします。
2 エキシマレーザーを照射
コンピュータに混濁の深さ、硬さに合わせた切除量を入力し、レーザーを照射します。
実際には、角膜混濁の切除状態を確認しながら、十分な照射ができた時点で終了します。 不十分な場合は切除を追加します。
3 保護用のコンタクトを装用
角膜の一番表皮側の角膜上皮が再生するまでの間は痛みがあります。
痛みをやわらげ、上皮の治りを助けるために数日間ソフトコンタクトレンズを装用します。
メリット
・濁りが取り除かれることにより、矯正視力の向上が期待されます。
・強度の近視の場合は裸眼視力が向上する場合があります。
デメリット
・手術後約1週間は角膜上皮が不完全なため、よく見えません。 (個人差があります。)
反対側の眼も手術される場合は、視力の安定を待つため2週間以上あけて行います。
・軽度の近視・正視の場合は手術後遠視化することにより、裸眼視力・手元の視力が低下する場合があります。
(※混濁の深さ・切除量で異なります)
・手術後ピントの位置が変わることがあります。これにより現在かけている眼鏡が合わなくなる場合があります。視力の安定には数カ月かかることがあります。
・白内障がある場合は、PTKの手術を行っても白内障の手術をしないと見え方が改善しないことが多いです。 また、その他の眼の疾患(網膜症など)がある場合も同様です。