視力回復手術を語る 第13回 レーシック、ICLと老眼 その①
2014/12/26
レーシック、ホールICLは一般に近視、遠視、乱視などの屈折異常を矯正し正視にする治療です。『正視』とは無調節状態で無限遠(遠く)にピントが合う状態で、近方を見る際は無意識に水晶体が膨らみ、ピント調節をしています。
40代になると水晶体の弾力性が失われ調節がしづらい状態になり、近方が見づらくなってきます。こういった調節力の低下を老眼、眼科用語では『老視』と呼び、60~65歳頃まで進行します。
当院でも老眼治療と称し治療をおこなっていますが、水晶体をやわらかくする、つまり調節力を回復させる根本的な治療では無いため、老眼治療という言葉は厳密にいえば適切ではありません。遠くの視力をできるだけ落とさず、手元も見やすくするための工夫と言った方が正しいでしょうか。
老眼治療は現状、モノビジョンという右眼と左眼でピントの合う位置に差をつける方法が第一選択となります。
老眼治療の種類
1. アキュフォーカスリング(レーシックカムラ)
Acu focus社の1.6mmの小さな穴の開いた黒いリングを角膜内に挿入することで焦点深度を深くし、近方を見やすくする方法です。
若干リング挿入眼を近視にすると満足度が高く、軽いモノビジョン状態になります。
リング挿入眼が乾きやすい、OCTで網膜所見が見づらいなどデメリットもあります。
2. モノビジョンレーシック
優位眼を遠方、非優位眼を近方に合わせ、左右眼で見え方を使い分ける方法です。
左右の度数差は基本的に1.5Dまででそれ以上は違和感を感じる人が多いですが、元来左右の度数差がある人は順応性が高いようです。
優位眼には2種類ある
一般的に呼ばれる優位眼とは『運動性優位眼』といって望遠鏡やカメラのファインダーを覗く眼をいいます。これはHole in card testという方法で判別できます。
一方、『感覚性優位眼』というものも存在し、これは必ずしも運動性優位眼と一致しません。運動性優位眼を遠くに合わせて、非優位眼を近くに合わせると違和感がある人に対し、遠近の見え方を逆にすると違和感が減る方がいますが、これは感覚性優位眼が影響していると考えられます。
その他にも、モノビジョンの適応には瞳孔の大きさや外斜位の程度などが関係してくるため簡単ではありませんが、コンタクトレンズでシミュレーションをすることができるのがモノビジョンレーシックのメリットです。
文責H