視力回復手術を語る 第16回 多焦点眼内レンズ① 回折型レンズ
2015/04/11
白内障手術の際に使用する多焦点眼内レンズはいくつかのメーカーから出ていますが、レンズによってピントの合う位置が異なるため、手術前のインフォームドコンセントをしっかりとおこないレンズ選択をしなければいけません。
回折型レンズは光の回折現象を利用して焦点の合う位置を複数に分けることで遠くと中間または近方を見やすくしています。
回折現象についてはこのサイトが大変分かりやすいのでご参照ください。
テクニスマルチフォーカル(AMO社製)
レンズの全体が回折構造となっており、遠くと近く(30cm)にピントが合うような構造となっています。基本的に瞳孔径に依存しないつくりで適応範囲が広いです。ただし構造上1mから50cmくらいの中間距離の視力が落ちるため、読書など近くの細かい文字をしっかり見たい方に推奨されるレンズです。
ReSTOR(Alcon社製)
レンズ直径6mm のうち中心3.6mmが遠近の回折領域で、周辺に向かい9段の階段構造が除々に低くなるアポタイズ回折型というデザインです。3.6mm より周辺は単焦点レンズとなっており、夜間など瞳孔径が大きくなる際は遠方視力を重視します。また瞳孔径が小さくなる近方視時には遠近のバランスが等しくなり手元の見え方も良好です。加入度数に応じて何種類か出て販売されていますが、主流は加入度数が実質+2.5Dで40cmにピントが合う距離のものです。テクニスマルチフォーカルほど近くはしっかり見えませんが中間視力が落ちにくいため自然な見え方を重視する方に推奨します。そして昨年より乱視用レンズが登場し、より適応範囲が広がりました。
回折型レンズは基本的に近方の見え方が良好ですが、20%ほど光がロスするのでコントラスト感度の低下による「なんとなく見えづらい」というwaxy visionが生じます。こればかりはある程度許容が必要なので了承いただいた方にのみお勧めをしております。
文責H