レーシック手術を受けると、将来白内障手術を受けられない?
2015/09/20
日本国内で眼科専門医によるレーシックが始まって15年以上が経過しました。これまで多くの方がレーシックを受けられましたが、初期にレーシックを受けた方の中には、年齢的に白内障になる方も出てきています。今回はレーシックを受けた後の白内障手術について説明します。
レーシックは角膜の形状を変化させる
レーシックという手術はすでに一般的なものになっています。これまでに多くの方がレーシックによって良好な視力を得ています。レーシックはエキシマレーザーという特殊なレーザーで角膜実質を切除して角膜の形状を変化させることにより、角膜の屈折力を変化させる手術です。角膜の屈折力の変化によってピントを合わせる位置が変化します。
レーシックについて
一方、白内障手術では眼の中の水晶体という部分の濁りを取り除いたうえで、水晶体の代わりになる人工のレンズである「眼内レンズ」を挿入します。
眼内レンズはすべての方に同じレンズが入るわけではなく、その方の眼の状態に応じた度数のレンズを計算してあらかじめ準備をしておく必要があります。この計算の際に、先に述べた角膜の屈折力のデータを用いるのですが、レーシックを受けた方の角膜の屈折力は受けていない方に比べて特殊な形状になっているため、一般的なデータや計算を用いて行ってしまうと手術後の屈折の度数が大きくずれてしまいます。
計算の精度をあげるために
一般的には、レーシックで近視を治療した眼の白内障手術の場合、手術後の屈折が予測よりも遠視になってしまうことが多くあります。原因としては前述の角膜の屈折力によるところが大きいのですが、レーシック後の角膜の屈折力は通常使用されている装置(オートケラトメータ)では正確に測定することができません。
レーシックでは角膜の前面のみ形状を変化させているにもかかわらず、通常の装置では後面も変化しているという仮定のもとに数値を出していますので、実際には後面が変化していないレーシック後の角膜ではこの前提が崩れてしまいます。さらには、レーシック後の角膜では屈折力を測定する範囲が広くなってしまうこともあり、これも正確に測定できない理由です。
角膜屈折力の値に加えて、眼内レンズの度数を計算するための計算式も手術後の屈折の度数がずれてしまう原因になります。現在でも多くの施設で使用されているSRK/Tという計算式は、計算に必要な要素の1つである「前房深度」という、角膜の後ろ側にある場所の大きさを三平方の定理を使って計算します。この計算の際にレーシック後の平らになった角膜では実際の前房深度よりも狭い計算になってしまうことがあり、これも術後の度数ずれの原因に直結します。
しかし最近では上記の問題点を克服できるようになってきました。
測定機器では、測定する際のポイント数を格段に増やしたものや、実際に角膜の後面まで測定ができる機器がすでに使用されております。また計算式においても、先ほど述べた前房深度の実測値を使用したり、実際にレーシックによって矯正された度数を加味したりする式を使用している施設も増えてきております。
さらには、これらを組み合わせることにより、たとえレーシック後であっても通常の眼と変わりなく眼内レンズの度数計算や術後の結果を出すことが可能になってきております。当院ではレーシックの先駆者としての責任から、この分野についても力を入れて研究を重ねており、スタッフがこの内容について論文を執筆しております。
あたらしい眼科1
あたらしい眼科2
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レーシックを受けてしまうと将来白内障手術ができなくなってしまうの?
答えはノーです。以前は難しかったものではありますが、すでに多くの症例を経験している施設においては問題なく手術ができるようになりました。ただし、きちんとした結果を得るためには経験豊富な施設での検査・診察が必要です。
白内障手術についてもっと詳しく聞きたい方は、南青山アイクリニックの無料説明会のご参加をお勧めいたします。
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